ばりすたの株式備忘録

ばりすたの株式備忘録

株の世界で5年後も生き残っていたい…

そーせいの増資について考えてみました。

先日、そーせいから増資(新株式発行)のお知らせが来ましたね。その前日、前々日のIRや決算説明資料を見ている限り、開発費用が足りないのは明らかだったので、増資の可能性も念頭に置いていましたが、想定より早く来た印象。

僕自身、初めての増資直撃体験だったので、過去の増資も振り返りつつ、バイオベンチャーなどが多用するMSワラントとは違うということを、自分なりに整理しておきたいと思います。

barista-stock.hatenablog.com

 

[目次]

新株式発行及び株式の売出しに関するお知らせ(2014年2月24日)

【発行株数】
 ・公募:1,588,000株
 ・オーバーアロットメントによる売り出し:238,000株

【引受人】
 SMBC日興証券

【調達資金の使途】
 上限:5,567,132,000円
 (→実際の手取概算額合計 4,667,938,845円)
 ・APNTを活用した医薬品の研究開発費:40億円(→3,667,938,845円)
 ・再生医療分野への投資:5億円(→5億円)
 ・APNTを活用した製剤の製造設備への設備投資:5億円(→5億円)
 ・研究開発に要する人件費等:5億円(→ゼロ)

【株価】
 ・2/24の終値:3,960円
 ・想定発行価格:3,048.8円(5,567,132,000円/1,826,000株)
 ・実施発行価格:2,638.95円(3/4の終値2,901円の0.91倍)

まずは、2014年の増資。調達資金の主な使途は、今はなきアクティバスファーマの独自技術に対するものでした。

当時の株価推移は以下の通り。1月末に下方修正を出して大きく下げていたものの、2月17日にアクティバスの2つの新規パイプラインで前臨床入りというリリースを出し、そこから6連騰。しかし、その6連騰目の大陽線があった日の引けで上記の増資リリースということで、その後は大きく下げることに。しかし5ヶ月後にはその水準を超えていました。

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新株式発行及び株式売出しに関するお知らせ (2015年9月1日)

【発行株数】
 ・公募:2,282,500株
 ・オーバーアロットメントによる売り出し:247,500株

【引受人】
 みずほ証券

【調達資金の使途】
 上限:12,755,000,000円
 (→実際の手取概算額合計 8,685,722,800円)
 ・Heptares買収に伴う短期借入金200億円の返済資金一部に充当:100億円

【株価】
 ・9/1の終値:4,810円
 ・想定発行価格:5,041.5円(12,755,000,0000円/2,530,000株)
 ・実施発行価格:3,460.76円(9/9の終値3,880円の0.89倍)

続いては2015年の増資。調達資金の使途は、2月21日に株式取得(子会社化)の決定がなされたヘプタレス社の買収資金に関するものでした。

当時のことは分かりませんが、株価の推移を見ると「よく分からんイギリスの会社を多額の金額で買収して大丈夫か?」という心境を表しているかのようで、リリース翌営業日は高寄りしたものの大陰線、そこから3ヶ月ほどは低迷していました。

その後、いくつかの好材料で盛り返していたものの、8月12日に発表された平成28年3月期第1四半期決算の内容が良くなく、翌営業日から大きく下げることに。そんな下げ基調の中での増資リリースでした。これも翌営業日からは下げたものの、2ヶ月後にはその水準を大きく超えるものとなりました。ヘプタレスのパイプラインのおかげです。

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新株式発行に関するお知らせ(2017年11月10日)

【発行株数】
 ・海外募集:2,070,000株

【引受人】
 ・J.P. Morgan Securities plc
 ・Merrill Lynch International

【調達資金の使途】
 上限:200億円
 ・既存、及び新規PL(DLB)に係る創薬及び研究開発に係る費用:160億円
 ・一般事業目的(本社機能強化に関する費用等):40億円

【株価】
 ・11/10の終値:11,230円
 ・想定発行価格:9,661.8円(200億円/2,070,000株)
 ・実施発行価格:???円(おそらく11/20の終値の0.9〜1.0倍)

そして、今回の増資。調達資金の主な使途は、創薬及び研究開発資金です。

下記の自社パイプラインの開発費は自社持ちなので、ここに多額の資金が必要になってくるのは明らかでした。過去2回も、決算発表後1〜2週間で増資のリリースが出ていたので、出るとすれば11月下旬あたりに…なんて思っていましたが、まさかの翌日wなぜ翌日だったのかというタイミングだけは、未だによく分かりません…(※11月中にどうしても資金調達しておきたかった、海外機関投資家が手に入れておきたかった理由があるんじゃないかと思うほどです。12月にビッグIRが控えてるとか…)

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また、下記スライドの最下段に「今後はGPCR関連自社パイプラインの研究開発から上市までを加速。2018年以降、毎年最大3つの医薬候補品のPh1入りを目指す」とあるように、これにも開発資金が必要になってきます。

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市場で勝つために当然の選択

これには、ギアを一段も二段も上げたような印象を受けました。

これまでのような導出や共同開発などの提携パイプラインだけでは、費用面などでは助かるものの、スケジュールや開発方針などは相手都合もあるので想像以上に時間がかかってしまう、というデメリットもあります。一方、自社パイプラインを充実させていければ、開発費はかかるものの、自分たちのがんばり次第でスピーディーに進めていくことができます。

どんなに良い効能のある薬も、法律や競合の開発状況との兼ね合いで好機を逃してしまう可能性もあり、上市後の売上は大きく変わってきます。つまり、良い薬を、競合に先駆けて、タイムリーに出せるかどうか、がとても重要。クオリティーだけでなく、スケジュールのコントロールも大切になってくるので、こういった判断、決断は当然といえば当然でしょう。

 

"海外市場での募集"という選択

今回の増資で、これまでと大きく異なるのは募集方法。今回はJ.P. Morgan Securities plcとMerrill Lynch Internationalをそれぞれ共同ブックランナー兼 共同主幹事引受会社としての海外市場での新株式発行になります。

前者は、直近、グループで保有割合を増やしていました。

後者は、空売りポジションを解消していました。

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この2社が引き受けの主幹幹事になるので、基本的には長期保有での売り出しがメインになるだろうと考えています。
※MSワラントは、キャピタルゲイン目的での引き受けが多く、短期売り抜けメインで、下方圧力がかかりやすい点が特徴

また、現状、マザーズ市場にいる以上、海外の機関投資家が買ってくれることはなかなか難しいと思うので、こういったスキームを取ったのだと思います。もちろん、200億という多額の金額にもかかわらず、11月20日ごろに発行価格決定して翌週の27日に振り込みというスケジュールで、他の増資と比べても期間が短いので、ある程度のアテがあった上での募集なんだと妄想しております。
→「期他の増資と比べても間が短い」と思ったのは、過去2回のオーバーアロットメント(第三者割当増資)における価格決定→払込のスケジュールのことで、公募の払い込みに関しては、過去2回も同様に価格決定の1週間後でした(2017年11月13日 訂正・追記)

 

以上を踏まえて今回の増資を見てみると、ホルダーとして売る材料が見当たりません。短期目線の人、あるいは11月10日に飛びついたイナゴが売ってきて、短期的な下げはあるかもしれませんが、下げても10,000円は割らないだろうと想定しています(発行価格決定時点)。それまでに、もし10,000万円を割るようなことがあれば、追撃買いOKの水準かと。とんでもない上げ材料が豊富、しかも増えてきてるので、2017年12月〜2018年1月にはもっと上の水準に行って、1万円の水準をいい意味で笑い飛ばせる日がきっと来ると考えています。

さて、どうなりますかね…

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アルツハイマー病発症の根源がインスリン抵抗性にあるのなら…

barista-stock.hatenablog.com

先日、『アルツハイマー病治療薬の最前線』という記事を書きましたが、その後も自分なりにいろいろ調べ、さらに知識がアップデートされたので、また備忘録として残しておきたいと思います。

[目次]

 

アルツハイマー病治療薬を取り巻く現状について

先の記事にも書いたように、現在、日本国内で認知症の薬として認可されているのは4種類で、大まかに分類すると、コリン仮説をベースとするアセチルコリンエステラーゼ阻害薬」グルタミン酸仮説をベースとする「NMDA受容体拮抗薬」の2つのアプローチの治療薬になります。しかし、どれも一定の効き目はあるものの、どちらも対症療法にすぎない、というのが現状です。

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アミロイドβ仮説に上がる懐疑的な声

そんな中、現在開発中の治療薬の主流はアミロイドβ(Aβ)仮説をベースとし、Aβをターゲットとするものです。

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「週刊エコノミスト」特集:認知症に克つ 2017年7月4日号 より

現在、Aβと結合し、脳内で異物を排除する役割を担うグリア細胞ミクログリア)に除去させる「抗Aβ抗体」(※脳のシミを消す・減らす)や、APPを切断するβセクレターゼに作用してAβの産生を抑える「BACE(βサイト切断酵素)阻害剤」(※脳のシミのもとを作らせない)などAβの異常蓄積を防ぐことを目的とした薬剤、また神経炎症の抑制やタウの凝集を防ぐことを目的とした薬剤が開発されています。

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エーザイ株式会社 記者懇談会資料(PDF)より

しかし、ロシュやイーライ・リリー、メルクなど、各社が臨床試験に失敗し、開発継続の断念が続いているのも事実で、アルツハイマー病の原因自体がいまだ特定できておらず、各社試行錯誤が続いている状況に変わりはありません。

www.nikkei.com

 

Aβ仮説に希望をもたらすアデュカヌマブ

一方、アルツハイマー病治療薬の最有力候補とされていた「アデュカヌマブ」に新しい動きがあり、Aβ仮説に希望の光が差し込んできました。

開発で失敗した薬は、脳以外にある凝集していないAβにもくっついてしまうことなどが原因で十分な効果が認められなかったと考えられているのに対し、この「アデュカヌマブ」は、脳内に凝集し、毒性を持ったAβだけに結合して取り除くものであるため、認知機能の改善に結びつくことが示唆されているとのこと。

9月2日:アルツハイマー病の抗体療法(9月1日号Nature掲載論文)

 

アルツハイマー病=脳の糖尿病(3型糖尿病)」という新しい仮説

Aβ仮説は異常たんぱくの凝集に着目したアプローチでしたが、「インスリン」に着目した仮説もあり、最近ではアルツハイマー病は脳の糖尿病だ」という意見も増えてきたように思います。

info.ninchisho.net

それがきっかけで下記の本に出会い、読んでみました。以下では、この新しい仮説についてのポイントをまとめておきます。

 

そもそも糖尿病とは?

糖尿病とは、インスリンというホルモンが絶対的、または相対的に不足するために、インスリン作用が低下した結果、ブドウ糖代謝異常を起こし、血糖値が上昇することで起きる病気です。 

「1型(5%)」と「2型(95%)」とがあり、前者は膵臓のβ細胞が破壊されて絶対的にインスリンが欠乏している状態です。後者の2型糖尿病は相対的に不足している状態で、インスリンの効果が出にくくなったり、分泌のタイミングが悪くなったりなど、血液中や脳内などで存在するインスリンの量に見合ったインスリン作用が発揮できていない状態("インスリン抵抗性"が高まっている状態)のこと。

インスリン抵抗性が高まり、高インスリン血症の状態では、インスリンが血液脳関門を越えて脳の中に入り込むことが難しくなり、記憶物質として機能することも困難になってしまいます。これが、糖尿病の人がアルツハイマー病にも罹りやすい原因の一つです。しかし、体が糖尿病でなくても、脳内インスリン抵抗性によって"脳だけ糖尿病"になる、という状態も起こりうるのです。

 

インスリンと脳の関係

糖尿病に深く関係しているインスリンは膵臓のβ細胞から分泌されていますが、そのβ細胞と脳の海馬の神経細胞は似た者同士で、脳の海馬の中でも膵臓と同じようにインスリンがつくられています

このインスリンは、脳の中で神経細胞の生存、修復を支え、記憶をつくるだけでなく、Aβを分解する作用も持っています。したがって、脳でのインスリン作用がうまく機能しなくなれば(インスリン抵抗性が高まっている状態)、Aβの蓄積を招き、脳の中のミクログリアと言われる細胞を刺激して、サイトカインなどの炎症性物質の分泌を亢進させ、インスリン情報伝達をさらに悪化させる、という悪循環が生じてしまうのです。 

 

アルツハイマー病の基本的な原因はインスリン抵抗性

「脳に蓄積したAβによって神経細胞の障害が進行してアルツハイマー病が発生している」と捉えるのはAβ仮説と同じですが、今回の場合は、さらにもう一段深掘って、脳内でのインスリン抵抗性の存在がアルツハイマー病の基本的な原因だと主張している点で、より本質に迫っている仮説だと思います。

つまり、糖尿病とアルツハイマー病の根本原因は本質的には一緒であり、糖尿病の人がアルツハイマー病にも罹りやすいということも肯けます。 

 

今後に期待できる治療薬は? 

第一選択薬はインクレチン関連薬

著者は、できる限り間接的に血糖値を下げる薬を選ぶべきだと指摘し、第一選択薬として挙げているのが「インクレチン関連薬」。

インクレチンには「GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)」と「GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)」の2種類があります。このうち、GLP-1には血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑える働きなどがあるのですが、生体内ではDPP-4という酵素によって数分以内に分解されてしまうため、GLP-1と同じ作用を持ってGLP-1受容体に結合しつつも、DPP-4には分解されにくい「GLP-1受容体作動薬」というインクレチン関連薬がつくられています。

たとえば、リラグルチド、エキセナチド、リキシセナチド、デュラグルチドなどは、アルツハイマー病の原因に基づいた治療薬としても注目されています(いずれも注射薬)。

 

アルツハイマー病治療薬として臨床試験が進められているリラグルチド

そのうちの一つリラグルチドは、アルツハイマー病患者に対する有効性を検討する医師主導試験が、イギリスで開始されています。

この試験(NCT01843075)は、206名のアルツハイマー病患者にリラグルチドを投与し、12ヵ月後の脳の糖代謝率を評価するというもの。主なアウトカム指標として、リラグルチドで治療した患者の脳におけるアミロイドプラーク形成およびタウ沈着などのアルツハイマー病進行の特徴を、プラセボで治療した患者と比較して評価します。

Evaluating Liraglutide in Alzheimer's Disease  - ClinicalTrials.gov

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そーせい(Heptares)とGLP-1

インスリンと糖尿病とアルツハイマー病についていろいろ調べていると、そーせいホルダーとして、1つ気になることが出てきました。 それは、下記IRについて。

子会社 Heptares 社、ペプチド作動薬に結合した GLP-1 受容体全長の構造を初めて解明 - 受容体の複雑な相互作用の特徴を解明し、ペプチド及び低分子医薬品開発の重要な糸口となる研究を Nature 誌に発表(2017年5月31日)

そーせい(Heptares)はWave2のパイプラインに、先天性高インスリン血症のような希少疾患治療薬として開発を進めている「GLP-1受容体拮抗薬」があります。しかし、上記IRは"拮抗薬"だけに限らない、さらなる広がりの可能性を感じさせる内容でした。気になる点を抜粋すると以下の通り。 

本研究の重要な点は、この先駆的な研究が多くの疾患に関連するGLP-1受容体やその関連Gタンパク質共役受容体(GPCR)を標的として、構造ベース創薬の手法でより最適化された低分子医薬品、ペプチド医薬品を創薬することが可能であることを証明していることです。

2型糖尿病の治療において、GLP-1受容体の活性化は高い有用性が確立された最も重要な作用機序のひとつであり、さらに代謝性疾患、心血管疾患、脳疾患などの治療ターゲットとしての可能性にも関心が集まってきています。2型糖尿病治療薬として、承認されているペプチド作動薬は既に数種あり、エキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、albiglutide、dulaglutideなど、生体内の GLP-1 よりも安定性と作用持続時間が改善されています。

これは完全に僕個人の妄想でしかないですが、アルツハイマー病治療薬の開発として、アラガンとの契約に基づいてM1などMシリーズを進めていますが、それとは作用機序が異なるものとして、アルツハイマー病治療薬としての「GLP-1受容体作動薬」の開発にも乗り出すのではないか、と考えるに至った次第。

ただ、そうなったとしても、既存のインクレチン関連薬は存在しているし、仮に上市できたとしてもかなり先のことなので、短期的には影響は軽微でしょう。しかしそれでも、この難病に対する根本的アプローチへの着手は、個人的には大いに期待したいところであります。

 

※薬学、医学の専門家ではないため、間違った知識、解釈等があるかもしれませんので、見つけた際はご指摘ください…

iPS細胞を使って明るい"再生医療のミライ"をつくる企業たち

多能性幹細胞関連の独自技術を用いて、新しい細胞応用製品の開発を行っている「株式会社 幹細胞&デバイス研究所(SCAD)」が以下のようなリリースを出しました。

  • シリーズ B 第三者割当増資の完了についてPDF

iPS 細胞由来の細胞組織片を開発、製造販売する株式会社幹細胞&デバイス研究所(Stem Cell & Device Laboratory, Inc. 以下「SCAD」)(本社:京都市下京区代表取締役:加藤謙介)は、本年 9 月 29 日までに、下記のベンチャーキャピタルと金融機関を引受先とする総額約 5 億 1 千万円の第三者割当増資を実施致しました。

 

【第三者割当引受先と出資額】
京都大学イノベーションキャピタル株式会社(約 1 億 6 千万円)
SMBC ベンチャーキャピタル株式会社(約 3 千万円)
・ニッセイ・キャピタル株式会社(約 1 億 6 千万円)
そーせいコーポレートベンチャーキャピタル株式会社(約 1 億円)
・三菱 UFJ キャピタル株式会社(約 3 千万円)
・京銀リース・キャピタル株式会社(約 3 千万円)

 

今回の資金調達により、細胞製品の更なる高機能化、品質安定化、量産化への取り組みを加速させて参ります。

このシリーズBの増資を完了したSCAD社の役員を見ると、京都大学名誉教授の中辻憲夫氏が取締役・最高顧問として名を連ねていました。

中辻氏は、その名前を知らない再生医療関係者はいないだろうと言われるほどの、幹細胞研究では世界的に著名な方。iPS細胞はもちろん、iPS出現以前に幹細胞研究の主流だったES細胞研究でもトップランナーの方です。また、リプロセル(4978)の創業科学者の一人でもあります。

胚性幹細胞(ES細胞)をはじめ、精子形成細胞や胎児期生殖細胞など、様々な細胞の発生分化制御機構の研究における権威である。
厳しい倫理規制の下、日本で最初に受精した胚からヒトES細胞の株の作成方法を樹立するとともに、ヒトES細胞株の分配体制も確立するなど、日本の再生医学分野の発展において、その功績は計り知れない。

中辻憲夫 - Wikipediaより

twitter.com

そんな中辻氏が取締役・最高顧問として関わるSCAD社について、どのようなビジネスをしているのかを見てみます。

 

iPS細胞を使った創薬支援事業を手がけるSCAD社

2014年に設立されたSCAD社が手がけているのは、いわゆる"再生医療"そのものではなく、新薬開発で使うテスト試料として心筋細胞を製薬会社などに販売するという事業。下記記事から抜粋した一文が、より詳しく説明しています。

幹細胞研究の第一人者として知られる中辻らは、より成人の心臓に近い組織を低コストでムラなく作製する独自技術を確立。「いずれ世界中のすべての新薬はiPS細胞から作る心筋細胞でテストするようになるだろう」と話す。
新薬テスト向けヒト細胞の世界市場は、数年以内に1,000億円を超えると見込まれている。このうち約半分が心筋細胞だ。
(中略)
「実用化のために必要なものは何なのか。産業としてのニーズはどこにあるのか。そうした戦略がなければ、iPS細胞で世界をリードすることはできない」。中辻は常に先を見据えているのである。

www.sankei.com

他の企業も、いくつか見てみましょう。

 

創薬支援の拡大を狙う富士フイルム

iPS細胞の医療応用、再生治療研究で一番気になるのは、山中伸弥教授率いる京都大学iPS細胞研究所(CiRA)武田薬品とがタッグを組んで誕生したT-CiRA

しかし、SCAD社のビジネスモデルに近い企業としては、iPS細胞を開発・製造するセルラーダイナミクス・インターナショナル(CDI)を買収して、iPS細胞を使った創薬支援の強化・拡大を考えている富士フイルムが挙げられます。

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toyokeizai.net

※下記サイトは、富士フイルムの考える再生医療について、とても分かりやすくまとめられています
富士フイルムは再生医療を加速させる

 

"再生治療のミライをつくる"そーせいCVCとは?

今回取り上げたSCAD社に出資したうちの1社 そーせいCVCとは、日本国内における再生医療研究開発を行うライフサイエンスに特化したバイオベンチャー企業再生医療技術の発展・事業化を支援する再生医療ファンド」を運用する目的で設立されたコーポレートベンチャーキャピタル(そーせいの連結子会社)です。

以前、そーせいCVCについての記事を書いてから半年近く経ちますが、今回の件まで特に音沙汰がありませんでした。

barista-stock.hatenablog.com

そのPluristem社との契約締結もまだ完了はしておらず、Pluristem社の9月のリリースでは、少し遅れている様子。

COMPANY PRESENTATION September 2017|Pluristem(PDF)

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しかし、そーせいCVCがPluristem社と合弁会社を設立して、日本国内で治験を進めようとしている、重症虚血肢を対象とした「PLX-PAD」は、欧米での進捗は非常に良好なので、一日でも早い国内治験開始が望まれるところです。

Pluristem Receives Positive Feedback from FDA and EMA as Company Prepares for Phase III Trial of PLX-PAD to Support Recovery from Hip Fracture Nasdaq:PSTI

 

これらの案件のように、そーせいCVCが出資する案件は、すぐに芽が出るものではなく、次世代への種蒔きそのもの。細胞医薬品「PLX-PAD」だけでなく、SCAD社の創薬支援事業の拡大も、長い時間軸であることを念頭に置きつつ、大いに期待したいですね。