ばりすたの株式備忘録

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株の世界で5年後も生き残っていたい…

MiNA社のパイプライン、MTL-CEBPAの治験状況に関する噂の真相について調査してみた件

2017年5月3日に、そーせいとの投資契約締結の発表がされたMiNA社には、進行肝がん治療用の新規小分子活性化RNA候補である重要なパイプラン「MTL-CEBPA」があります。 

barista-stock.hatenablog.com

 

先日、この治験の進捗に遅れが生じているのでは?という噂を耳にしたので、その真相について調査してみました。 

 

MTL-CEBPAとは?

既述の通り、進行肝がん治療用の新規小分子活性化RNA候補であり、現在進行中のMTL-CEBPAに関するフェーズI/Ⅱa臨床試験(OUTREACH)の結果による、マイルストン達成と関連した段階的な条件付対価体系を設けた契約を提携しています。

Clinical Development

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治験状況は?

ClinicalTrials.govによると、現在の状況は以下の通りで、直近では2017年6月13日にサイトは更新されたようです。

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サイトの変更履歴を確認

何が起きたのかを確認するには、このページの過去の変更履歴を確認するのが一番。それは、こちらから閲覧できます(現時点までの修正履歴は下記参照)。

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契約締結の発表は2017年5月3日にあったので、2017年5月24日の変更はそれを受けてのものだと思われます。したがって、その前後の履歴を、争点となっている「完了日(予定)」に絞って比較してみたいと思います。

 

2017年2月21日時点

そーせいとの契約が締結される以前の2月21日の時点では「2017年6月」となっていました。

NCT02716012 on 2017_02_21: ClinicalTrials.gov Archive

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2017年5月24日時点

次に、契約締結発表後の更新では「2017年9月」と変更されています。 

NCT02716012 on 2017_05_24: ClinicalTrials.gov Archive

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しかし、ここで疑問が生じます。

当時のリリース本文内の「今後の見通し」においては、試験結果は「今後12〜18ヶ月以内と見込まれる」って書かれているんですよね。それなのに、発表の4ヶ月後に完了、ってのはさすがにおかしい。上記の完了予定日は、少なくとも「2018年6月〜12月の間のどこか」になるはず。つまり、この変更自体が間違いだったのではないか、と思うんです。

2017年6月13日時点

そして、約3週間後の6月13日には、丸1年後の「2018年9月」と変更されました。"最終フォローアップ日"も、同じく1年後の「2018年12月」に変更(2月21日→5月24日の変更のときは変更なし)。この日付は上記「今後の見通し」に記載のスケジュール感とも一致するものです。

NCT02716012 on 2017_06_13: ClinicalTrials.gov Archive

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この一連の変更状況を比較してみると、 6月13日時点の変更は、治験の進捗に遅れが生じた結果のものではなく、本来5月24日時点で変更されるべき内容に直された、と考えるのが妥当な考えではないかと思うのです。

しかも、もし治験の進捗が遅れて1年も延期されるような事態が生じていたのであれば、それはすぐにIRされるべき内容であるにもかかわらず、サイト変更からすでに2ヶ月以上経っていますし、8月の決算でも触れられていないことを踏まえると、なおさら単なるケアレスミスの変更間違いだったと判断するのが妥当なのではないでしょうか。

以上の理由から、MTL-CEBPAの治験の進捗に遅れが生じたのでは?と不安に思っている方は、そんなことはないはずなので、ひとまずは安心して大丈夫。

ただ、治験関係者の方には、こういったケアレスミスをできるだけ防ぐように注意していただきたいですね。

※上記の"打ち消し線"部分については、当初の考えに間違いがあったため、以下の追記・修正にて改めさせていただきます 

結論(追記・修正_2017/8/23)

最初に書いた記事では「遅れは生じていない、ケアレスミスだ」と考え、そのように書いていたのですが、以下のような重大な見落とし、見当違いがあったと指摘を受けました。

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引用されたMiNAのパイプラインの資料はこちら。

個人投資家説明会(2017年5月19日)

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ご指摘の通りで、上記資料からは

  • Ph1はもともと2017年後半には終わる予定でPh2aとは別物

かつ

  • Ph2aまでの完了が2018年内の予定だった

と推察できます。

現在実施されている治験はPh1であることを考えると、個人投資家説明会が実施された5月19日、そして5月24日のサイト変更時点では、その時点の変更内容通り「2017年9月完了予定」だったのではないかと考えられます。

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そして、約3週間後の6月13日に完了予定日は「2018年9月」と変更された…。しかも、これはPh1だけのスケジュール。
NCT02716012 on 2017_06_13: ClinicalTrials.gov Archive

 

以上を踏まえると、Ph2のデータ解析完了までが12〜18ヶ月以内、つまり、2018年6月から12月の間での完了予定とされていたものが、Ph1単体で1年ほど遅れ、2018年9月に完了予定になった、ということ。したがって、噂の真相は真実だった、と結論付けられます。

ただ、腑に落ちないのは、重要事項なのに、6月のサイト変更、あるいは8月の決算発表時点で会社側から説明がなかった、という点。今期の業績には見込んでないからなのかもしれませんが…。
それでも、多額の投資をした重要なパイプラインであることには変わりないので、その進捗に大きな変更があったのであれば、株主に説明すべき。今に始まったことではないですが、コミュニケーション不足が否めず、不信感が助長される事案でした。残念。

「血液1滴、がん13種早期発見」の一連の報道についてまとめてみた件

「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」が取り組んでいる研究結果が徐々に明るみに出てきているように思います。

しかし、「血液1滴、がん13種早期発見」というほぼ同じ内容のニュースが、7月末からの1ヶ月ほどの間に3回も報道されたのですが、一見すると何が違うの?という内容。でも、それぞれちょっとした新しい情報が織り交ぜられているので、分かりやすく整理しておきます。

 

体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクトとは?

国立がん研究センター研究所を中心とした産学連携のプロジェクトで、血液中のマイクロRNAの大規模解析を行い、日本人に多い13種類のがん(胃がん、大腸がん、食道がん膵臓がん、肝がん、胆道がん、肺がん、乳がん卵巣がん前立腺がん、膀胱がん、神経膠腫、肉腫)およびアルツハイマー病等の認知症患者の早期発見マーカーの探索、および実用化を実施しています。

研究開発メンバー紹介|体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト

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このプロジェクトは2014年度から2018年度の5年間が活動期間で、最近になってそれがどのように形になるのかについての報道が増えてきましたので、整理しておきます。

 

2017年7月24日

7月24日が具体的な内容の初めての報道だったと記憶しています。"8月から臨床研究を始め、3年以内をめどに事業化申請を行う"という概要についての発表でした。

国立がん研究センター(東京都)などは、血液1滴で乳がんなど13種類のがんを早期発見する新しい検査法を開発し、来月から臨床研究を始める。同センターの研究倫理審査委員会が今月中旬、実施を許可した。早ければ3年以内に国に事業化の申請を行う。

yomidr.yomiuri.co.jp

 

 

2017年8月3日

これはほぼ同様の内容ですが、"今月から臨床研究が始まりました"という内容が主です。あとは、こちらは医療系のメディアなので、細かく、具体的な説明がされているのが特徴。

techon.nikkeibp.co.jp

 

2017年8月13日

NHKでも"今月から臨床研究が始まりました"という記事が上がったものの、これは後に削除されてしまったようです。その後、特に同様の記事の掲載はなし。NHKが削除した理由は気になるところですが、そこまでは分からず…。

 

2017年8月19日、20日

共同通信や産経ニュース、日経新聞、あるいは地方紙の1面にも掲載されたとのコメントも見受けられましたが、最新の記事には、"費用は2万円になる見込み"という新情報が追加されています。 

また、産経ニュースなどに書かれていた下記の「現段階では一般の人を対象とした研究は予定していない」「まず乳がんの検査法としての承認を目指したい」も初出の情報で、これをネガティブに捉えられている方を散見しますが、基本的には想定の通り進んでいる、と僕は捉えています。

対象は記事にも書かれているように、「新たにがんと診断された人ら3千人以上の」方ということから一般の人を対象としていないと書いているだけですよね。また、13種類を同時並行で進められるわけはないし、事業化まで3年ほどかかるので、優先順位をつけた上で「まずは乳がん」から、ということなのではないでしょうか。「特に、乳がんや大腸がんでは非常に確度の高い検出が可能になってきた」という落谷さんのコメントもありますからね。

このため新たにがんと診断された人ら3千人以上の新鮮な血液を採取し、有効かどうかを調べる臨床研究を進める。現段階では一般の人を対象とした研究は予定していない。チームは、まず乳がんの検査法としての承認を目指したいとしている。

this.kiji.is

www.sankei.com

www.nikkei.com

 

事業化はまだまだ先ですが、今後も継続的に情報が出てきそうな感じですね。

ちなみに、直近だと、9月末に日本癌学会学術総会が開催され、国立がん研究センター研究所の落谷さんがシンポジウム、セッションに登壇予定。

今後も継続的にウォッチしていきます。

 

全自動検査システムの開発で本プロジェクトに関わっているプレシジョン・システム・サイエンス(PSS)に関する記事はこちら

barista-stock.hatenablog.com

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PSS(7707)は材料・思惑相場継続に

本日8/14、プレシジョン・システム・サイエンス(PSS|7707)の決算が発表されました。 

平成 29 年6月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

中期事業計画(平成30年6月期~平成32年6月期)策定に関するお知らせ

本決算は事前に赤字縮小の上方修正が出ていて想定内だったので、中期事業計画について見ていきたいと思います。

 

中期事業計画(損益計画)

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2016年に出されていた中期事業計画(下記参照)と比べると今後2年間はほとんど変わらず、3年後の平成32年(2020年)6月期に大きく伸びると見込んでいます。黒転予想も平成31年(2019年)度と変化なし。

 

その売上計画の内訳を見てみると(下図参照)、「直販」の比率を増やし、「試薬・消耗品類」の販売で売上を伸ばしていく方針だということが分かります。これは、これまでの臨床研究用途から、診断用途向け拡大のトレンドにしっかり乗っていく、ということですね。

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この方針の支えになるのは、2017年5月に資本業務提携を行った日立ハイテクノロジーズの存在。自動化装置と試薬・消耗品類を日立ハイテクの販売網で売上を積み上げていくことが大前提となります。

「この中計は日立ハイテクと膝を突き合わせて詰めている」とIRの方は言っていたので、見方を変えると、日立ハイテクのコミットメント度合いが強いとも見て取れます。まぁ、それだけこの市場が大きく成長すると見込んでいるんでしょうね。

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ただ、ここまでの情報だと大したサプライズもなく、日立ハイテクとしてもそれだけのコミットをして割に合うのか?と心配になるほど平凡な内容。しかし、今回の中計の最大のポイントはQ&Aに関する2枚のスライドにあると考えます。それぞれ、具体的に見ていきましょう。

 

材料・思惑①:リキッドバイオプシーによるがんの早期発見

「リキッドバイオプシー」とは、血液などの体液サンプルを使って診断や治療効果予測を行う技術のことで、これに関連したニュースが7月末頃から出てきており、PSSも参画しているNEDOが取り組む「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」が対象になっていることで、材料視されています。

techon.nikkeibp.co.jp

 

それを受けての回答が下記のスライド。

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具体的な回答は控えているものの、一部の執筆を担当した『miRNAの最新知識 ~基礎領域から診断・治療応用まで~』で情報発信をしていることに触れています。

書籍の内容については下記記事を見ていただければと思いますが、この書籍の内容から、近日発売予定の「geneLEAD VIII」 あるいは現在開発中の「geneLEAD RBA96(仮称)」が、このリキッドバイオプシーにおいて必要な装置だということが推測できます。

本プロジェクトでも使用されている「geneLEAD XII plus」では、人の手で4〜6時間かかっていたものが全自動化で2〜3時間に短縮され、精度や再現性においても、試験に慣れた技術者が行ったデータと同等以上の結果が得られているようです。

全自動遺伝子解析装置の観点から見たmiRNAの最新知識 - ばりすたの株式備忘録

他社で全自動遺伝子解析装置を作っているところはあるものの、全自動化が遅れている分野において、これだけ高精度かつ、再現性高く解析ができるのはPSSの強みである、と実感した次第です。

全自動遺伝子解析装置の観点から見たmiRNAの最新知識 - ばりすたの株式備忘録

barista-stock.hatenablog.com

このプロジェクトは2018年度で終了予定ですし、今月から臨床研究を行うことになっているので、もう少し待てば明らかになることでしょう。

 

材料・思惑②: 次世代シーケンサーの開発

次世代シーケンサーとは、ランダムに切断された数千万から数億のDNA断片の塩基配列を同時並行的に決定することができる装置のこと。標的DNAを増幅しているわけではないので広範囲の遺伝子を網羅的に解析できる一方、その精度はリアルタイムPCRなどに劣ります。この次世代シーケンサーが話題になったのは、6月末に新聞記事に取り上げられてからでしょうか。

yomidr.yomiuri.co.jp

PSSは、下記の回答にも記載されている通り、自社製品ラインナップには次世代シーケンサーを持たないものの、その前処理工程の核酸抽出技術に優位性を持つ企業です。

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遺伝子検査において、核酸抽出は重要かつ難易度の高い作業で、しかもまだ熟練技師の手に頼ることが多い領域。

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がん遺伝子の一括検査が保険適用になると、当然、核酸抽出の精度を高めながらも自動化して大量に処理していくことが求められ、次世代シーケンサーが製品ラインナップになくても売上に寄与してくるだろうと考えられ、材料視していました。

しかし一方で、PSS日立ハイテク次世代シーケンサーの開発・販売に乗り出すのでは?」という思いもありました。それを確信に近いものにしてくれたのが、下記2枚のスライドの波線部分。

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PSS側は、「geneLEADは次世代シーケンサーではない」と言っている一方で、「将来、次世代シーケンサー関連製品の開発及び販売をする可能性はある」ことにも触れています。 

資本業務提携提携時の「日立ハイテクが中型遺伝子検査システムを開発し販売する」という記載に関連するものはまだ表に出てきていませんし、これは現在開発中の「geneLEAD RBA96(仮称)」ではないということはIRに確認済みですので、新しい動きに関する発表が待たれるところ。ちなみに、次世代シーケンサーを新規で開発する場合でも、コアとなる技術(核酸抽出のMagtration®技術)は既存のものを活用できるので、開発期間はそれほどかからないということも確認済みです。

 

また、実は、日立ハイテク次世代シーケンサーによって決定された塩基配列データをWindowsMacで解析できるソフトウェア「SEQUENCHER(シーケンチャー)」の販売代理店でもあるんです。次世代シーケンサーと試薬・消耗品類も自前で揃えることができれば、がんの遺伝子検査における次世代シーケンシングをがっつりと抑えられることができるので、ここまでを狙ってるんじゃないかとさえ思えてきます。

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何はともあれ、診断用途市場において「直販」かつ「試薬・消耗品類」の売上に軸を移していくとなると、収益計画の数字は「リキッドバイオプシー」や「次世代シーケンサー」の流れに乗っていかなければ実現できない数字だと思います。

今回、それらがある程度明らかになる発表があると期待していたので、それがなかったこと自体は残念ですが、その可能性が読み取れる記載をしてくれていたことは評価に値するのかな、とも感じています。

というわけで、引き続き、geneLEAD、及び日立ハイテクが開発する中型遺伝子検査システムの進捗を待ちましょう!