ばりすたの株式備忘録

ばりすたの株式備忘録

株の世界で5年後も生き残っていたい…

メドピア(6095) - 5枚の決算説明資料で押さえる"今"と"これから"

最近注目している銘柄、メドピア(6095)についての分析を、簡単ではありますが、僕なりに整理してみました。2017年11月に発表された「2017年9月期決算説明資料」及び、下記決算説明会の内容を分析のベースとしています。

logmi.jp

 

[目次]

 

1.事業概要

メドピアは、ミッションに「医師を支援すること。そして患者を救うこと。」と掲げ、集合知により医療を再発明する。」ことをビジョンとして事業を営んでいます。

事業は大きく分けて2つ、「ドクタープラットフォーム事業」と「ヘルスケアソリューション事業」です(下図参照)。もともとはプラットフォームから始まり、ヘルスケアソリューションの2社を買収することで、現在の形になりました。現在の売上構成比は以下の通り。意外に、買収した事業が貢献していますね。

  • ドクタープラットフォーム事業:MedPeer 67%、転職支援 12%
  • ヘルスケアソリューション事業:21%

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2.業績動向

売上は非常に好調で、四半期売上は過去最高を更新

一方、利益の伸びは、ヘルスケアソリューション事業2社の投資が先行した影響で抑えられたものの、それでも連結グループの営業利益は前期比1.4倍と拡大

事業拡大をしながらも、しっかりと増収増益を実現できているのは評価に値しますね。

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3.中期戦略

時価総額500円超を目指して

中期経営計画目標値は公表されていませんが、時価総額500億円超を目指して事業展開していくと記載しています。ちなみに、現在の時価総額は91億円(株価1,047円)なので、時価総額500億円となると今から約5.5倍。

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また、メドピアが過去に発行した新株予約権の行使条件にも、メドピアが目指す経営目標値が見て取れます。

第10回新株予約権(有償ストック・オプション)では、100%行使の条件として"平成29年9月期及び平成30年9月期の経常利益の累積額が500百万円を超過した場合"としていて、"平成30年9月期及び平成31年9月期の経常利益の累積額が500百万円を超過した場合"は50%行使としています。このままだとどちらも行使は厳しそうですが…

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さらに、第11回新株予約権(第三者割当)では、"割当日(平成28年5月31日)から5年以内に東証における直前1ヶ月の当初普通株式終値平均値が5,640円以上となった場合に100%行使、割当日から3年以内に同じく2,820円以上となった場合に50%行使"となっています。

https://chart.yahoo.co.jp/?code=6095.T&tm=3m&type=c&log=off&size=m&over=m65,m130,s&add=v&comp=

 

今期営業黒字化を目指すヘルスケアソリューション事業 

そこで、当面重要になるのがヘルスケアソリューション事業だと考えます。

2017年9月期は投資先行期間だったものの、2018年9月期予想ではこの子会社も営業黒字化を目指していて、連結グループ営業利益は前期比3倍に寄与するものと計画され、急速な成長を見込んでいるからです。

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"遠隔医療"という国策

特に注目したいのが「first call」。

www.firstcall.md

DeNA執行役員の林光洋氏DeNA取締役会長の春田真氏が立ち上げた株式会社Mediplat(メディプラット)が取り組む、オンライン健康相談プラットフォームです。

基本的には企業や健康保険組合など法人向けに事業展開していて、一般消費者向けのサービス課金は2017年5月から本格展開が開始されたという状況。

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そして、さらに注目すべきは"ICT活用の遠隔医療"という国策の波に乗るという点。平成30年度診療報酬改定の基本⽅針はほぼ了承済みで、12月第一週には決定する予定とのことです。

yomidr.yomiuri.co.jp

現在の遠隔医療の課題の1つは「診療報酬」であり、遠隔医療の診療報酬は対面報酬と比較して低い状態(3〜5倍の開き)です。今後、今までの開業医の先生や病院の先生が対面で患者さんと接するのと同じぐらいの診療報酬が遠隔医療にもつくようになれば、提供する医師側においても時間の効率などで確実に生産性向上につながるため、遠隔医療の導入が増えていくと考えられます。

そのような状況になったときに、法人向け、及び一般消費者向けでの導入実績があり、遠隔診療の医療機関向けでも運用を開始している「first call」はとても優位な立場にあるでしょう。

techon.nikkeibp.co.jp

ちなみに、健康相談についてではありますが、2017年1月の記事("Amazon.com"を医療相談の世界にも:日経デジタルヘルス)によると、相談件数は1日平均150件ほどで、多いときは350件にも及ぶとのこと。すでに、なかなかの運用実績がありますね。

 

補足)競合サービスとの比較

最後に、競合サービスも見ておきましょう。遠隔医療の代表格として挙げられるのは「ポケットドクター」。"民間初の遠隔診療"として、MRT(6034)とオプティム(3694)が共同開発したサービスです。

www.pocketdoctor.jp

現在の「ポケットドクター」の状況は以下の通り(2018年3月期第2四半期の決算説明会資料より)。登録医師数や医療機関数は多いように感じますが、業績を見る限り、2018年3月期の下期にかなりのコストを見込んでいるようで、まだまだ投資フェーズが続いているようです。

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下記の記事では、MRTの「ポケットドクター」の他に、メドレーの「CLINICS(クリニクス)」や情報医療の「curon(クロン)」が紹介されていました。

www.nikkei.com

「first call」はサービス単体で見ると、競合サービスに見劣りする点もあるかもしれませんが、医療とヘルスケアのプラットフォームを包括的に提供している事業者は、現在のところメドピアだけ。医療とヘルスケアを結びつけたプラットフォームを他社に先駆けて構築することで、製薬企業から健康保険組合・企業、そして個人に至る顧客の広がりや、サービスの有機的結合による先行者メリットを得られる可能性も感じさせられます。

 

何はともあれ、まずは"遠隔医療"という国策の波にいかにうまく乗れるかどうかに注目ですね。
社会保障審議会(医療部会)の情報はこちらで確認

 

 

そーせいの増資について考えてみました。

先日、そーせいから増資(新株式発行)のお知らせが来ましたね。その前日、前々日のIRや決算説明資料を見ている限り、開発費用が足りないのは明らかだったので、増資の可能性も念頭に置いていましたが、想定より早く来た印象。

僕自身、初めての増資直撃体験だったので、過去の増資も振り返りつつ、バイオベンチャーなどが多用するMSワラントとは違うということを、自分なりに整理しておきたいと思います。

barista-stock.hatenablog.com

 

[目次]

新株式発行及び株式の売出しに関するお知らせ(2014年2月24日)

【発行株数】
 ・公募:1,588,000株
 ・オーバーアロットメントによる売り出し:238,000株

【引受人】
 SMBC日興証券

【調達資金の使途】
 上限:5,567,132,000円
 (→実際の手取概算額合計 4,667,938,845円)
 ・APNTを活用した医薬品の研究開発費:40億円(→3,667,938,845円)
 ・再生医療分野への投資:5億円(→5億円)
 ・APNTを活用した製剤の製造設備への設備投資:5億円(→5億円)
 ・研究開発に要する人件費等:5億円(→ゼロ)

【株価】
 ・2/24の終値:3,960円
 ・想定発行価格:3,048.8円(5,567,132,000円/1,826,000株)
 ・実施発行価格:2,638.95円(3/4の終値2,901円の0.91倍)

まずは、2014年の増資。調達資金の主な使途は、今はなきアクティバスファーマの独自技術に対するものでした。

当時の株価推移は以下の通り。1月末に下方修正を出して大きく下げていたものの、2月17日にアクティバスの2つの新規パイプラインで前臨床入りというリリースを出し、そこから6連騰。しかし、その6連騰目の大陽線があった日の引けで上記の増資リリースということで、その後は大きく下げることに。しかし5ヶ月後にはその水準を超えていました。

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新株式発行及び株式売出しに関するお知らせ (2015年9月1日)

【発行株数】
 ・公募:2,282,500株
 ・オーバーアロットメントによる売り出し:247,500株

【引受人】
 みずほ証券

【調達資金の使途】
 上限:12,755,000,000円
 (→実際の手取概算額合計 8,685,722,800円)
 ・Heptares買収に伴う短期借入金200億円の返済資金一部に充当:100億円

【株価】
 ・9/1の終値:4,810円
 ・想定発行価格:5,041.5円(12,755,000,0000円/2,530,000株)
 ・実施発行価格:3,460.76円(9/9の終値3,880円の0.89倍)

続いては2015年の増資。調達資金の使途は、2月21日に株式取得(子会社化)の決定がなされたヘプタレス社の買収資金に関するものでした。

当時のことは分かりませんが、株価の推移を見ると「よく分からんイギリスの会社を多額の金額で買収して大丈夫か?」という心境を表しているかのようで、リリース翌営業日は高寄りしたものの大陰線、そこから3ヶ月ほどは低迷していました。

その後、いくつかの好材料で盛り返していたものの、8月12日に発表された平成28年3月期第1四半期決算の内容が良くなく、翌営業日から大きく下げることに。そんな下げ基調の中での増資リリースでした。これも翌営業日からは下げたものの、2ヶ月後にはその水準を大きく超えるものとなりました。ヘプタレスのパイプラインのおかげです。

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新株式発行に関するお知らせ(2017年11月10日)

【発行株数】
 ・海外募集:2,070,000株

【引受人】
 ・J.P. Morgan Securities plc
 ・Merrill Lynch International

【調達資金の使途】
 上限:200億円
 ・既存、及び新規PL(DLB)に係る創薬及び研究開発に係る費用:160億円
 ・一般事業目的(本社機能強化に関する費用等):40億円

【株価】
 ・11/10の終値:11,230円
 ・想定発行価格:9,661.8円(200億円/2,070,000株)
 ・実施発行価格:???円(おそらく11/20の終値の0.9〜1.0倍)

そして、今回の増資。調達資金の主な使途は、創薬及び研究開発資金です。

下記の自社パイプラインの開発費は自社持ちなので、ここに多額の資金が必要になってくるのは明らかでした。過去2回も、決算発表後1〜2週間で増資のリリースが出ていたので、出るとすれば11月下旬あたりに…なんて思っていましたが、まさかの翌日wなぜ翌日だったのかというタイミングだけは、未だによく分かりません…(※11月中にどうしても資金調達しておきたかった、海外機関投資家が手に入れておきたかった理由があるんじゃないかと思うほどです。12月にビッグIRが控えてるとか…)

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また、下記スライドの最下段に「今後はGPCR関連自社パイプラインの研究開発から上市までを加速。2018年以降、毎年最大3つの医薬候補品のPh1入りを目指す」とあるように、これにも開発資金が必要になってきます。

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市場で勝つために当然の選択

これには、ギアを一段も二段も上げたような印象を受けました。

これまでのような導出や共同開発などの提携パイプラインだけでは、費用面などでは助かるものの、スケジュールや開発方針などは相手都合もあるので想像以上に時間がかかってしまう、というデメリットもあります。一方、自社パイプラインを充実させていければ、開発費はかかるものの、自分たちのがんばり次第でスピーディーに進めていくことができます。

どんなに良い効能のある薬も、法律や競合の開発状況との兼ね合いで好機を逃してしまう可能性もあり、上市後の売上は大きく変わってきます。つまり、良い薬を、競合に先駆けて、タイムリーに出せるかどうか、がとても重要。クオリティーだけでなく、スケジュールのコントロールも大切になってくるので、こういった判断、決断は当然といえば当然でしょう。

 

"海外市場での募集"という選択

今回の増資で、これまでと大きく異なるのは募集方法。今回はJ.P. Morgan Securities plcとMerrill Lynch Internationalをそれぞれ共同ブックランナー兼 共同主幹事引受会社としての海外市場での新株式発行になります。

前者は、直近、グループで保有割合を増やしていました。

後者は、空売りポジションを解消していました。

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この2社が引き受けの主幹幹事になるので、基本的には長期保有での売り出しがメインになるだろうと考えています。
※MSワラントは、キャピタルゲイン目的での引き受けが多く、短期売り抜けメインで、下方圧力がかかりやすい点が特徴

また、現状、マザーズ市場にいる以上、海外の機関投資家が買ってくれることはなかなか難しいと思うので、こういったスキームを取ったのだと思います。もちろん、200億という多額の金額にもかかわらず、11月20日ごろに発行価格決定して翌週の27日に振り込みというスケジュールで、他の増資と比べても期間が短いので、ある程度のアテがあった上での募集なんだと妄想しております。
→「期他の増資と比べても間が短い」と思ったのは、過去2回のオーバーアロットメント(第三者割当増資)における価格決定→払込のスケジュールのことで、公募の払い込みに関しては、過去2回も同様に価格決定の1週間後でした(2017年11月13日 訂正・追記)

 

以上を踏まえて今回の増資を見てみると、ホルダーとして売る材料が見当たりません。短期目線の人、あるいは11月10日に飛びついたイナゴが売ってきて、短期的な下げはあるかもしれませんが、下げても10,000円は割らないだろうと想定しています(発行価格決定時点)。それまでに、もし10,000万円を割るようなことがあれば、追撃買いOKの水準かと。とんでもない上げ材料が豊富、しかも増えてきてるので、2017年12月〜2018年1月にはもっと上の水準に行って、1万円の水準をいい意味で笑い飛ばせる日がきっと来ると考えています。

さて、どうなりますかね…

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アルツハイマー病発症の根源がインスリン抵抗性にあるのなら…

barista-stock.hatenablog.com

先日、『アルツハイマー病治療薬の最前線』という記事を書きましたが、その後も自分なりにいろいろ調べ、さらに知識がアップデートされたので、また備忘録として残しておきたいと思います。

[目次]

 

アルツハイマー病治療薬を取り巻く現状について

先の記事にも書いたように、現在、日本国内で認知症の薬として認可されているのは4種類で、大まかに分類すると、コリン仮説をベースとするアセチルコリンエステラーゼ阻害薬」グルタミン酸仮説をベースとする「NMDA受容体拮抗薬」の2つのアプローチの治療薬になります。しかし、どれも一定の効き目はあるものの、どちらも対症療法にすぎない、というのが現状です。

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アミロイドβ仮説に上がる懐疑的な声

そんな中、現在開発中の治療薬の主流はアミロイドβ(Aβ)仮説をベースとし、Aβをターゲットとするものです。

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「週刊エコノミスト」特集:認知症に克つ 2017年7月4日号 より

現在、Aβと結合し、脳内で異物を排除する役割を担うグリア細胞ミクログリア)に除去させる「抗Aβ抗体」(※脳のシミを消す・減らす)や、APPを切断するβセクレターゼに作用してAβの産生を抑える「BACE(βサイト切断酵素)阻害剤」(※脳のシミのもとを作らせない)などAβの異常蓄積を防ぐことを目的とした薬剤、また神経炎症の抑制やタウの凝集を防ぐことを目的とした薬剤が開発されています。

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エーザイ株式会社 記者懇談会資料(PDF)より

しかし、ロシュやイーライ・リリー、メルクなど、各社が臨床試験に失敗し、開発継続の断念が続いているのも事実で、アルツハイマー病の原因自体がいまだ特定できておらず、各社試行錯誤が続いている状況に変わりはありません。

www.nikkei.com

 

Aβ仮説に希望をもたらすアデュカヌマブ

一方、アルツハイマー病治療薬の最有力候補とされていた「アデュカヌマブ」に新しい動きがあり、Aβ仮説に希望の光が差し込んできました。

開発で失敗した薬は、脳以外にある凝集していないAβにもくっついてしまうことなどが原因で十分な効果が認められなかったと考えられているのに対し、この「アデュカヌマブ」は、脳内に凝集し、毒性を持ったAβだけに結合して取り除くものであるため、認知機能の改善に結びつくことが示唆されているとのこと。

9月2日:アルツハイマー病の抗体療法(9月1日号Nature掲載論文)

 

アルツハイマー病=脳の糖尿病(3型糖尿病)」という新しい仮説

Aβ仮説は異常たんぱくの凝集に着目したアプローチでしたが、「インスリン」に着目した仮説もあり、最近ではアルツハイマー病は脳の糖尿病だ」という意見も増えてきたように思います。

info.ninchisho.net

それがきっかけで下記の本に出会い、読んでみました。以下では、この新しい仮説についてのポイントをまとめておきます。

 

そもそも糖尿病とは?

糖尿病とは、インスリンというホルモンが絶対的、または相対的に不足するために、インスリン作用が低下した結果、ブドウ糖代謝異常を起こし、血糖値が上昇することで起きる病気です。 

「1型(5%)」と「2型(95%)」とがあり、前者は膵臓のβ細胞が破壊されて絶対的にインスリンが欠乏している状態です。後者の2型糖尿病は相対的に不足している状態で、インスリンの効果が出にくくなったり、分泌のタイミングが悪くなったりなど、血液中や脳内などで存在するインスリンの量に見合ったインスリン作用が発揮できていない状態("インスリン抵抗性"が高まっている状態)のこと。

インスリン抵抗性が高まり、高インスリン血症の状態では、インスリンが血液脳関門を越えて脳の中に入り込むことが難しくなり、記憶物質として機能することも困難になってしまいます。これが、糖尿病の人がアルツハイマー病にも罹りやすい原因の一つです。しかし、体が糖尿病でなくても、脳内インスリン抵抗性によって"脳だけ糖尿病"になる、という状態も起こりうるのです。

 

インスリンと脳の関係

糖尿病に深く関係しているインスリンは膵臓のβ細胞から分泌されていますが、そのβ細胞と脳の海馬の神経細胞は似た者同士で、脳の海馬の中でも膵臓と同じようにインスリンがつくられています

このインスリンは、脳の中で神経細胞の生存、修復を支え、記憶をつくるだけでなく、Aβを分解する作用も持っています。したがって、脳でのインスリン作用がうまく機能しなくなれば(インスリン抵抗性が高まっている状態)、Aβの蓄積を招き、脳の中のミクログリアと言われる細胞を刺激して、サイトカインなどの炎症性物質の分泌を亢進させ、インスリン情報伝達をさらに悪化させる、という悪循環が生じてしまうのです。 

 

アルツハイマー病の基本的な原因はインスリン抵抗性

「脳に蓄積したAβによって神経細胞の障害が進行してアルツハイマー病が発生している」と捉えるのはAβ仮説と同じですが、今回の場合は、さらにもう一段深掘って、脳内でのインスリン抵抗性の存在がアルツハイマー病の基本的な原因だと主張している点で、より本質に迫っている仮説だと思います。

つまり、糖尿病とアルツハイマー病の根本原因は本質的には一緒であり、糖尿病の人がアルツハイマー病にも罹りやすいということも肯けます。 

 

今後に期待できる治療薬は? 

第一選択薬はインクレチン関連薬

著者は、できる限り間接的に血糖値を下げる薬を選ぶべきだと指摘し、第一選択薬として挙げているのが「インクレチン関連薬」。

インクレチンには「GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)」と「GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)」の2種類があります。このうち、GLP-1には血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑える働きなどがあるのですが、生体内ではDPP-4という酵素によって数分以内に分解されてしまうため、GLP-1と同じ作用を持ってGLP-1受容体に結合しつつも、DPP-4には分解されにくい「GLP-1受容体作動薬」というインクレチン関連薬がつくられています。

たとえば、リラグルチド、エキセナチド、リキシセナチド、デュラグルチドなどは、アルツハイマー病の原因に基づいた治療薬としても注目されています(いずれも注射薬)。

 

アルツハイマー病治療薬として臨床試験が進められているリラグルチド

そのうちの一つリラグルチドは、アルツハイマー病患者に対する有効性を検討する医師主導試験が、イギリスで開始されています。

この試験(NCT01843075)は、206名のアルツハイマー病患者にリラグルチドを投与し、12ヵ月後の脳の糖代謝率を評価するというもの。主なアウトカム指標として、リラグルチドで治療した患者の脳におけるアミロイドプラーク形成およびタウ沈着などのアルツハイマー病進行の特徴を、プラセボで治療した患者と比較して評価します。

Evaluating Liraglutide in Alzheimer's Disease  - ClinicalTrials.gov

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そーせい(Heptares)とGLP-1

インスリンと糖尿病とアルツハイマー病についていろいろ調べていると、そーせいホルダーとして、1つ気になることが出てきました。 それは、下記IRについて。

子会社 Heptares 社、ペプチド作動薬に結合した GLP-1 受容体全長の構造を初めて解明 - 受容体の複雑な相互作用の特徴を解明し、ペプチド及び低分子医薬品開発の重要な糸口となる研究を Nature 誌に発表(2017年5月31日)

そーせい(Heptares)はWave2のパイプラインに、先天性高インスリン血症のような希少疾患治療薬として開発を進めている「GLP-1受容体拮抗薬」があります。しかし、上記IRは"拮抗薬"だけに限らない、さらなる広がりの可能性を感じさせる内容でした。気になる点を抜粋すると以下の通り。 

本研究の重要な点は、この先駆的な研究が多くの疾患に関連するGLP-1受容体やその関連Gタンパク質共役受容体(GPCR)を標的として、構造ベース創薬の手法でより最適化された低分子医薬品、ペプチド医薬品を創薬することが可能であることを証明していることです。

2型糖尿病の治療において、GLP-1受容体の活性化は高い有用性が確立された最も重要な作用機序のひとつであり、さらに代謝性疾患、心血管疾患、脳疾患などの治療ターゲットとしての可能性にも関心が集まってきています。2型糖尿病治療薬として、承認されているペプチド作動薬は既に数種あり、エキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、albiglutide、dulaglutideなど、生体内の GLP-1 よりも安定性と作用持続時間が改善されています。

これは完全に僕個人の妄想でしかないですが、アルツハイマー病治療薬の開発として、アラガンとの契約に基づいてM1などMシリーズを進めていますが、それとは作用機序が異なるものとして、アルツハイマー病治療薬としての「GLP-1受容体作動薬」の開発にも乗り出すのではないか、と考えるに至った次第。

ただ、そうなったとしても、既存のインクレチン関連薬は存在しているし、仮に上市できたとしてもかなり先のことなので、短期的には影響は軽微でしょう。しかしそれでも、この難病に対する根本的アプローチへの着手は、個人的には大いに期待したいところであります。

 

※薬学、医学の専門家ではないため、間違った知識、解釈等があるかもしれませんので、見つけた際はご指摘ください…