ばりすたの株式備忘録

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株の世界で5年後も生き残っていたい…

核酸医薬にまつわるエトセトラ

本日、下記のニュースを見て「核酸医薬の開発に追い風が吹くのか!?」とざわつきました(あれ、一部の人だけですか?w)。

www.nikkei.com

とはいえ、そんなすぐに盛り上がりを見せるものではないと思うのですが、今後の盛り上がりのためにも、今のうちに、核酸医薬とはどんなもので、核酸医薬を取り巻く環境はどうなっているのか、少しまとめておきたいと思います。

 

まず、医薬品を大まかに分類すると、化学合成で作る「低分子医薬」と主に"生物"を中心として作られる「バイオ医薬」に分かれます。

さらに「バイオ医薬」を分類すると、主なものとして「抗体医薬」「ペプチド医薬」「核酸医薬」などに分けられます。

※次世代バイオ医薬品の主な分類は下図(「週刊エコノミスト 2016年12月6日号」より)参照

それでは、それぞれについてもう少し理解を深めていきましょう。

【目次】 

 

これまでのバイオ医薬と核酸医薬

1. 抗体医薬

「抗体医薬」とは抗体(※)を利用した医薬品のことで、高い治療効果と副作用の軽減が期待できます。例えば、がん細胞だけが特異的に持つタンパク質の抗体を用意し、体内に投与すると、その抗体が、がん細胞だけを攻撃してくれるのです。

※抗体って?

chugai-pharm.info

直近の代表的な抗体医薬を挙げると、小野薬品工業(4528)の「オプジーボ」がありますが、「高い治療効果と副作用の軽減」というのは容易に想像できるかと思います。

 

2. ペプチド医薬

ペプチド医薬は、分子量の少ない「低分子医薬」と、抗体医薬などの高分子医薬の中間に位置づけられる医薬品のことで、「中分子医薬」とも呼ばれます。

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低分子医薬は分子量が小さいので細胞内に入り込むことができ、細かな標的を狙うのに適しています。しかし、面積の大きい標的を捉えることはできず、タンパク質同士の結合を阻害することはできません。また、経口投与が可能で安く製造することができる反面、標的への特異性が低いため副作用も起こりやすい、という特徴があります。

一方、抗体医薬は標的への特異性や結合力が強く、タンパク質同士の結合を阻害するのは得意ですが、高分子なため細胞内に入っていくことはできません。製造コストは高く、経口投与ができないというデメリットがあります。

これらのいいとこ取りをしたものがペプチド医薬。低分子や抗体では狙えなかった標的にアプローチすることが可能になり、経口投与も可能で、化学合成できるため製造コストも安く抑えられると期待されています。

 

このペプチド医薬に関する企業を挙げると、代表的なものには、特殊ペプチドを作り出してスクリーニングする、独自の創薬プラットフォームシステム「PDPS」を持つペプチドリーム(4587)、あるいはそーせい(4565)子会社のJITSUBOがあります。

ペプチド医薬品の社会的意義|事業紹介|JITSUBO株式会社

 

3. 核酸医薬

核酸医薬とは、DNAやRNAといった遺伝情報を司る物質「核酸」を医薬品として利用したもの。従来の低分子医薬や抗体医薬はDNAから作られる最終産物であるタンパク質を標的にしている一方、核酸医薬はmRNAを標的としたものになります。

※下記はボナックのHPより

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核酸医薬の種類と特徴

核酸医薬は、その標的や作用機序によって種類や特徴が異なります。

※下記はボナックのHPより

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ちなみに、世界の核酸医薬市場で承認されてるのはまだ3品目だけ。アイシス・ファーマシューティカルズによって上市された「Vetravene」と「Kynamro( mipomersen )」、そしてファイザーのアプタマー医薬品「マクジェン」です。

これらの特徴は高い活性作用と高い選択性。病気の原因になるDNA配列が分かればアプローチでき、簡便・迅速な医薬設計が可能です。個別医療に適しており、創薬期間が短く低コストというメリットも。

一方、克服すべき課題を挙げるとすれば、核酸医薬の大部分が不安定で分解しやすいRNAであるため、生体内での運搬が難しいといった点でしょうか。

現在、この欠点を改善する研究が世界各地で急速に行われているのですが、RNA干渉(RNAi / RNA interference)に関する基本特許を欧米企業が独占していることから、日本企業の開発は遅れを取っていると言われています。

answers.ten-navi.com

 

核酸医薬市場における開発競争

そんな、世界から遅れを取っている日本企業でも、各社いろいろな動きを見せています。ここでは、代表的な企業の動向を挙げておきます。

中外製薬(4519) × ナノキャリア(4571)

がんを対象としたsiRNA医薬品開発への挑戦(PDF)

核酸デリバリー技術に関する欧州特許庁からの特許査定について(PDF) - 2017年1⽉12⽇

中外製薬株式会社とのsiRNA医薬品に関する共同研究契約延⻑のお知らせ(PDF) - 2017年3⽉3⽇

 

日本新薬(4516)

米国で開発中の核酸医薬品「NS-065 / NCNP-01」、米国FDAよりオーファンドラッグ指定受理のお知らせ - 2017年1月16日

※米国:2016年3月より第2相臨床試験を開始し、2016年10月にはファストトラック指定

※日本国内:2015年10月に厚生労働省より先駆け審査指定制度の指定、2016年1月から第1/2相臨床試験を開始


日東電工(6988)

Nittoとブリストル・マイヤーズ スクイブ社がグローバル独占ライセンス契約締結 - 2016年11⽉11⽇

ブリストル・マイヤーズ スクイブ、進行非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)およびNASH由来肝硬変の標的siRNA療法の世界的独占契約を日東電工と締結 - 2016年11⽉11⽇

※進行性非アルコール性脂肪性肝炎と肝硬変を対象とした治療薬「ND-L02-s0201」、米国FDAよりファスト・トラック(優先審査)の指定済み

※NASHまたはC型肝炎等に起因する進行線維症(F3-F4)の第1b/2相試験を実施中


第一三共(4568)

DS-5141(デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療剤)の「先駆け審査指定制度」対象品目指定について - 2017年4月24日

※国内において第1/2相臨床試験を実施中


アンジェス(4563)

そして、2016年時点で最も開発が進んでいるとされていたアンジェスの「AMG0101」ですが、2016年7月5日にアトピー性皮膚炎治療薬の国内第3相臨床試験において、プラセボ(偽薬)投与群との間で統計学的な有意差が示されなかったと発表されました。

shikiho.jp

その後、2016年7月12日には、次世代核酸医薬の「キメラデコイ」の基盤技術開発を完了して製品開発に乗り出すとの発表も。

shikiho.jp

同薬はSTAT6とNF-κBという炎症に関わる2つの重要な因子を同時に抑制する核酸医薬です。まず、臨床試験の実施に必要な前臨床試験を開始。具体的には、製剤の開発や安全性試験などを実施した後、喘息・慢性関節リウマチ・変形性関節症・クローン病など炎症性疾患に対する治療薬の開発を目指すとのこと。

また、HGF遺伝子治療薬の開発の進捗も気になるが、果たして…

アンジェス広報ブログ(2017/07/03)より

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MiNA【そーせい(4565)】

そして最後に紹介するのは、そーせいが買収オプション権を含む投資契約を締結したMiNA社。

barista-stock.hatenablog.com

同社はRNA活性化治療分野におけるリーディングカンパニーで、現在、肝がん患者へのC/EBP-a転写因子発現亢進薬MTL-CEBPAの第1相試験を実施中。

また、先ほどRNA干渉(RNAi / RNA interference)に関する基本特許を欧米企業が独占している」と書きましたが、その昔、メルクやロシュがRNA干渉関連に莫大な投資をしたものの、その後パッとせず現在に至っているという経緯があります。そういった経緯も踏まえ、MiNA社のsaRNAはそのRNAiとは異なるアプローチを取っており、多くのリスクが排除されたものになっているようで、より期待できそうです。

barista-stock.hatenablog.com

 

核酸医薬市場の形成はまだまだこれからであり、核酸医薬を取り巻く開発競争はこれからさらに熾烈なものになっていくと予想されます。どの企業が頭一つ抜けていくのか、今後の動向にアンテナを張っておきたいですね。