ばりすたの株式備忘録

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株の世界で5年後も生き残っていたい…

全自動遺伝子解析装置の観点から見たmiRNAの最新知識

先日、プレシジョン・システム・サイエンス(PSS / 7707)から、書籍『miRNAの最新知識 ~基礎領域から診断・治療応用まで~』にて全自動遺伝子解析装置に関する原稿を執筆した、というニュースリリースがあったので、さっそく購入して読んでみました。

PSSが担当したのは「第17章 miRNAによる検査診断ツールおよび核酸医薬開発の現状」内の「第2節 臨床現場での仕様に向けた全自動核酸抽出装置」のパートだったので、その部分だけですが、僕なりにまとめてみたいと思います。

その前にまず、PSSが本書籍の執筆に至った経緯の説明から…
PSSは、2014年度から2018年度にわたる国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)の「次世代がん診断システム開発プロジェクト」に参加しています。

体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクトという内容で、独立行政法人国立がん研究センターをはじめ、大学機関や民間企業等、全17機関で取り組んでいるもので、そのプロジェクトメンバーの1つがPSS
※参照:研究開発メンバーの紹介|プレシジョン・システム・サイエンス株式会社(PSS)

本書籍は、まさに"研究経過報告書のサマリー"とでも言えるようなもので、各プロジェクトメンバーが各研究内容を簡潔にまとめています。

本プロジェクトで「臨床現場での使用に向けた検査システムの開発」を担当しているPSSは第17章・第2節を

  1. Magtration®を使った核酸抽出装置
  2. 全自動遺伝子解析装置
  3. 将来への展望 

の3パートに分けてまとめていました。もちろん、とびっきりの新ネタが書かれているわけではないのですが、ホルダーとしては握力を高めることができました。ポイントは2つあると思っていて、「Magtration®テクノロジーのすごさ」「臨床現場の協力を得られる環境」です。以下では書籍の内容を踏まえながら、それらについて触れていきたいと思います。

質の高い全自動化を実現したMagtration®

通常、遺伝子検査は

  1. サンプルからのDNA/RNAの精製
  2. 核酸の増幅反応のセットアップ
  3. 核酸増幅反応
  4. 結果の判定

といった4つの工程で行われます。

遺伝子検査は生化学検査や免疫血清検査と比べると歴史が浅く、全自動化が遅れていることもあり、これらの工程が人の手によって実施されていることが多いそうです。しかも工程の複雑さ、感度の高さから、信頼性の高い結果を再現よく得るためには、訓練された技術者が試験を行うことが必須になっているとのこと。

この遺伝子検査に必要な4つの工程の自動化に取り組み、それを可能にした技術が、磁性粒子に着目したMagtration®。これはノーベル賞の選考委員を務めた実績を持つ、マティアス・ウーレン教授(スウェーデン王立工科大学)のお墨付きを得るほどの技術です。技術の詳細を知りたい方は動画を見てみてください。

www.youtube.com

このMagtration®テクノロジーによって熟練技術者でも差が出やすい核酸抽出工程を自動化したことで、その後の工程においても信頼性、再現性の高い結果を得ることが可能になりました。

本プロジェクトでも使用されている「geneLEAD XII plus」では、人の手で4〜6時間かかっていたものが全自動化で2〜3時間に短縮され、精度や再現性においても、試験に慣れた技術者が行ったデータと同等以上の結果が得られているようです。

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※図は 『miRNAの最新知識』のp.181より抜粋

他社で全自動遺伝子解析装置を作っているところはあるものの、全自動化が遅れている分野において、これだけ高精度かつ、再現性高く解析ができるのはPSSの強みである、と実感した次第です。

医療現場と連携を取りながらの開発

ただ、解析の質が高い!とはいえ、一般的には、数千種類を越える多様な塩基配列を持ち、かつそれらの存在比率やコピー数にも差のあるmiRNAを対象として、高精度かつ再現性高く解析することは非常に困難なこと。 
また、どのようなmiRNAが解析の対象になるか、現状では不明確であり、多種多様な解析に適応することができる検査用試薬及び機器の開発が必須になります。

PSSはこれらの課題を解決するために

  1. 対象とする疾患の関連する臓器由来の特定なエクソソームを分離し、
  2. 単離されたエクソソームよりmiRNAを抽出し、
  3. 数種類から数百種類のmiRNAの高感度な同時検出及び解析を可能とする検出システム、かつ
  4. これらの工程の完全な自動化、検査試薬のパッケージ化

を予定しています。

さらに、データの検証や各種最適化のために、実際の医療現場の協力を得ながら、より実用的な自動化システムを構築していくとのこと。

これはとても重要なポイントで、いくら自動化で省力化できるとはいえ、現場が使いやすいもの、現場が求めているものにしていくことは最低条件。通常であれば、仮説検証するだけのデータを収集するのは気が遠くなる話だと思いますが、幸い、本プロジェクトを通じてであれば、医療現場とつながりを持った中で、たくさんの仮説検証を繰り返し、ブラッシュアップしていくことができると容易に想像できます。

geneLEAD VIII

実際、このプロジェクトの過程でブラッシュアップされたと思われる「geneLEAD VIII」(近日発売予定) は、中小の病院でも導入しやすいスペックになっています。

geneLEAD RBA96(仮称)

また、現在開発中の「geneLEAD RBA96(仮称)」のスペックは、本プロジェクトが最終目標の1つとして掲げている「1日100検体の処理能力を目標にmiRNA検出自動化装置の設計を行う」に近いものになっています。これがおそらく、本プロジェクトの最終アウトプットして製品化され、現場に普及していくものになると考えられます。

 

このように、PSSは技術力の高さだけでなく、現場が求めているものを作り出せる環境に身を置き、それをまさに開発中の状況なのです。そういったことが、本書籍から読み取れました。

期末決算発表は2017年8月14日(月)の予定。2017年6月期の数字は予想通り赤字だと思いますが、今後が楽しみな会社だなと思います。

なお、PSSという会社に興味を持った方は、ぜひ下記記事もご覧ください(決して買い煽りではありません。あくまでも投資は自己責任でお願いします…)。

barista-stock.hatenablog.com