ばりすたの株式備忘録

ばりすたの株式備忘録

株の世界で5年後も生き残っていたい…

がん治療の新薬、続々〜分子標的薬や免疫薬のあれこれ

最近、自分でアンテナを張ってるということもありますが、がん治療の新薬開発に関する情報が増えてきているように思います。

たとえば、残念ながら開発中止のニュースですが、協和発酵キリンの分子標的薬「チバンチニブ」の件だったり、

www.nikkei.com

あるいは、大々的報道されたノバルティスファーマの新型がん免疫薬「キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞治療薬」が米FDAで承認された件など。特にCAR-T細胞関連は他にもいくつか報道されていましたね。

www.nikkei.com

 

こうした新しい動きが出てきていますが、一般的にがんの三大治療と言えば

で、今でもやはり手術が第一の選択肢として検討されるという状況に変わりはありません。しかし、様々な治療薬が開発・承認されているので、今回はそれらについてまとめてみたいと思います。

 

[目次]

 

分子標的薬

従来の抗がん剤との違い

分子標的薬も化学療法の一種ですが、従来の抗がん剤との違いについて、まずは見ていきます。

従来の抗がん剤は、「盛んに分裂する」というがん細胞特有の性質を抑え込む特徴を持った薬。がん細胞と正常な細胞を区別して抑え込むことができるわけではないため、正常な細胞も攻撃してしまい、副作用も多く出てしまうというデメリットがありました。

これに対して分子標的薬は、がん細胞が持っている特定の分子(遺伝子やたんぱく質)をターゲットとして、その部分だけに作用する薬のこと。標的とする分子は、主にがん細胞の異常増殖を促している異常なたんぱく質、つまりがん細胞を増やす犯人で、その異常なたんぱく質と結合することで働きを抑え込み、がん細胞の増殖を止める役割を果たしてくれます。

f:id:barista_stock:20171009132809j:plain

分子標的薬のメリット

分子標的薬のメリットとして、がん細胞をピンポイントで狙い撃ちすることができるため、従来型の抗がん剤に比べて副作用が少ないと考えられている点が挙げられます。

また、もう一つ大きなメリットと考えられているのは「効果が期待できるかどうか、治療を受ける前に予想がつきやすい」ということです。つまり、がんの特定の遺伝子やたんぱく質を調べることによって、効果が期待できる患者さんだけに投与することができるんですね。

また最近では、薬選びは「臓器別」から「遺伝子変異別」に変わってきているとも言われています。DNA配列が変わると遺伝子に傷がつくのですが、それを「遺伝子変異」と言い、遺伝子変異が生じると変異した遺伝子から異常なたんぱく質が作られるようになります。

遺伝子変異のタイプが違うということは、がんを増殖させている異常なたんぱく質が異なるということ。つまり、同じ臓器の同じタイプのがんであっても遺伝子変異が違う場合は、使うべき分子標的薬も変わってくるということなのです。

※参照:「もっと知ってほしいがんの分子標的薬のこと[PDF]」

豆知識:語尾の規則性

分子標的薬には、大きく分けて「抗体医薬」と「小分子阻害剤」があります。

がん細胞の表面にある分子に抗体が結合して、がん細胞の働きを抑えるもので、主に注射薬として使用。薬の名称の最後に「…mab」が付きます(例:ベバシズマブ、トラスツズマブなど)。

  • …momab(モマブ):マウスなどヒト以外の生物由来のモノクローナル抗体
  • …ximab(シマブ):キメラ抗体
  • …zumab(ズマブ):ヒト化抗体(相補性決定領域以外のフレームワーク領域がヒト抗体)
  • …mumab(ムバブ):遺伝子組換えによりヒト以外の細胞に作製させたヒト型抗体
  • 【阻害剤】 酵素活性阻害(inhibitor)作用を示す低分子化合物を使うもの、非抗体薬

がん細胞の中にある分子を標的にして細胞の増殖などのシグナル伝達を抑えてくれるもので、主に経口薬として使用。薬の名称の最後に「…nib」が付きます(例:ゲフィチニブ、ラパチニブなど)。

  • …tinib(チニブ):tyrosine kinase inhibitorの作用を示すもの

 

免疫チェックポイント阻害剤

まだまだ限定的な免疫療法

人間の体は「免疫」によって守られています。免疫は、体にとって有害な病原体や異常細胞を監視し、攻撃や排除をするもの。最近では、この免疫力を活用してがんの発症や進行を阻止する「免疫療法」が、三大治療に次いで注目を集めるようになってきています。

しかし、ほとんどの免疫療法では有効性が認められておらず、現在、臨床研究で効果が明らかにされている免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤などの一部に限られ、治療効果が認められるがんの種類も今はまだ限られています。

f:id:barista_stock:20171009140704j:plain

免疫チェックポイント阻害剤の役割

免疫チェックポイント阻害剤とは、「免疫細胞の一種であるT細胞が活性化することを制御・抑制する仕組み」を阻害する薬剤のこと。つまり、がん細胞が免疫細胞にかけたブレーキを外すことで、がん細胞に対する免疫細胞(T細胞)の攻撃力が復活する、という仕組みです。

f:id:barista_stock:20171009140431p:plain

現在、国内で主に開発が進められている免疫チェックポイント阻害薬は

  • 抗CTLA-4抗体
  • 抗PD-1抗体
  • 抗PD-L1抗体

の3種類。抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体は国内でもすでに承認されていますが、抗PD-L1抗体はまだ承認されていません。

※免疫細胞のブレーキボタンにあたるのが「PD-1」で、ブレーキボタンを押すがん細胞の腕にあたるのが「PD-L1」と呼ばれるたんぱく質

※詳細は下記ページ参照

answers.ten-navi.com

免疫チェックポイント阻害剤のメリット・デメリット

免疫チェックポイント阻害剤には、効き目が長く持続するという優れている点があります。
分子標的薬は使い続けるとがんが耐性を獲得して、早ければ半年、長くても数年で効かなくなることが多い一方、免疫チェックポイント阻害剤は5年間以上使い続けながら、ずっとがんを抑えられている患者も現れているほどです。

併用療法にシフトする開発競争

しかし、がんの種類にもよりますが、免疫チェックポイント阻害剤単独では投与された患者の2~3割にしか効かないことも分かってきているようです。

そこで、さらなる効果を得るために、免疫チェックポイント阻害剤の開発競争は併用療法にシフトしています。2種類の免疫チェックポイント阻害剤を併用したり、免疫チェックポイント阻害剤と従来型抗がん剤を併用したりすると、効果が上がるとの報告も出始め、さらに分子標的薬を併用する臨床試験も次々と始まっています。

 

新たな「がん免疫療法」として期待されるアデノシンA2A受容体拮抗薬

新しいアプローチの登場

PD-L1以外にも、がん細胞はアデノシンと呼ばれる物質を分泌することで、免疫からの攻撃を回避することが知られています。アデノシンはT細胞のアデノシンA2A受容体を刺激し、T細胞の増殖を阻害、がん細胞に対する殺傷力を低下させるのです。

f:id:barista_stock:20171009145632p:plain

※参照:そーせいグループ株式会社「株主通信 第27期決算号」

このことから、このA2A受容体を塞ぐような薬が開発されれば、がん細胞に対する本来の攻撃力を取り戻すことができると考えられます。また、この方法は抗PD-1抗体薬やその他の抗がん剤とはまったく異なるアプローチとなるので、併用することでより強い治療効果が得られると期待されています。

A2A受容体拮抗薬の開発状況

まったく新しいアプローチなので先行薬はないのですが、現在4つの臨床試験が進められています。基本的にはどれも併用療法ですね。

f:id:barista_stock:20171009151000p:plainAACR – Parkinson’s approach to cancer needs more work(2017/04/05)

※アデノシンA2A受容体拮抗薬は、もともとは、脳内の運動機能を低下させる物質の作用を抑え、パーキンソン病における運動機能低下などを改善する薬

この中で先行しているはCorvus社のCPI-444でしょうか。2017年後半にはPh1b/2試験の患者登録の開始が予定されているとのこと。
Corvus Pharmaceuticals Expands CPI-444 Clinical Collaboration with Genentech(2017/05/02)

そーせい(4565)の進捗

当初の予定では、2016年7月に始まったPh1aの読み出しは2017年後半ごろを予定されているので、そろそろ何か動きがあるのではないでしょうか。関連するIRは以下の2つです。

がん免疫療法の新薬候補の第1相臨床試験開始に伴い、子会社Heptares社はAstraZeneca社から10百万米ドルのマイルストンを受領(2016年7月6日)

子会社Heptares社、AstraZeneca社から12百万米ドルのマイルストンを受領(2017年4月5日)

競合の進捗状況も含めて、動向はしっかり追っていかねばです…

barista-stock.hatenablog.com