ばりすたの株式備忘録

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株の世界で5年後も生き残っていたい…

アルツハイマー病発症の根源がインスリン抵抗性にあるのなら…

barista-stock.hatenablog.com

先日、『アルツハイマー病治療薬の最前線』という記事を書きましたが、その後も自分なりにいろいろ調べ、さらに知識がアップデートされたので、また備忘録として残しておきたいと思います。

 

アルツハイマー病=脳の糖尿病(3型糖尿病)」という新しい仮説

Aβ仮説は異常たんぱくの凝集に着目したアプローチでしたが、「インスリン」に着目した仮説もあり、最近ではアルツハイマー病は脳の糖尿病だ」という意見も増えてきたように思います。

info.ninchisho.net

それがきっかけで下記の本に出会い、読んでみました。以下では、この新しい仮説についてのポイントをまとめておきます。

 

そもそも糖尿病とは?

糖尿病とは、インスリンというホルモンが絶対的、または相対的に不足するために、インスリン作用が低下した結果、ブドウ糖代謝異常を起こし、血糖値が上昇することで起きる病気です。 

「1型(5%)」と「2型(95%)」とがあり、前者は膵臓のβ細胞が破壊されて絶対的にインスリンが欠乏している状態です。後者の2型糖尿病は相対的に不足している状態で、インスリンの効果が出にくくなったり、分泌のタイミングが悪くなったりなど、血液中や脳内などで存在するインスリンの量に見合ったインスリン作用が発揮できていない状態("インスリン抵抗性"が高まっている状態)のこと。

インスリン抵抗性が高まり、高インスリン血症の状態では、インスリン血液脳関門を越えて脳の中に入り込むことが難しくなり、記憶物質として機能することも困難になってしまいます。これが、糖尿病の人がアルツハイマー病にも罹りやすい原因の一つです。しかし、体が糖尿病でなくても、脳内インスリン抵抗性によって"脳だけ糖尿病"になる、という状態も起こりうるのです。 

インスリンと脳の関係

糖尿病に深く関係しているインスリン膵臓のβ細胞から分泌されていますが、そのβ細胞と脳の海馬の神経細胞は似た者同士で、脳の海馬の中でも膵臓と同じようにインスリンがつくられています

このインスリンは、脳の中で神経細胞の生存、修復を支え、記憶をつくるだけでなく、Aβを分解する作用も持っています。したがって、脳でのインスリン作用がうまく機能しなくなれば(インスリン抵抗性が高まっている状態)、Aβの蓄積を招き、脳の中のミクログリアと言われる細胞を刺激して、サイトカインなどの炎症性物質の分泌を亢進させ、インスリン情報伝達をさらに悪化させる、という悪循環が生じてしまうのです。  

アルツハイマー病の基本的な原因はインスリン抵抗性

「脳に蓄積したAβによって神経細胞の障害が進行してアルツハイマー病が発生している」と捉えるのはAβ仮説と同じですが、今回の場合は、さらにもう一段深掘って、脳内でのインスリン抵抗性の存在がアルツハイマー病の基本的な原因だと主張している点で、より本質に迫っている仮説だと思います。

つまり、糖尿病とアルツハイマー病の根本原因は本質的には一緒であり、糖尿病の人がアルツハイマー病にも罹りやすいということも肯けます。 

 

今後に期待できる治療薬は? 

第一選択薬はインクレチン関連薬

著者は、できる限り間接的に血糖値を下げる薬を選ぶべきだと指摘し、第一選択薬として挙げているのが「インクレチン関連薬」。

インクレチンには「GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)」と「GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)」の2種類があります。このうち、GLP-1には血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑える働きなどがあるのですが、生体内ではDPP-4という酵素によって数分以内に分解されてしまうため、GLP-1と同じ作用を持ってGLP-1受容体に結合しつつも、DPP-4には分解されにくい「GLP-1受容体作動薬」というインクレチン関連薬がつくられています。

たとえば、リラグルチド、エキセナチド、リキシセナチド、デュラグルチドなどは、アルツハイマー病の原因に基づいた治療薬としても注目されています(いずれも注射薬)。

AD治療薬として臨床試験が進められているリラグルチド

そのうちの一つリラグルチドは、アルツハイマー病患者に対する有効性を検討する医師主導試験が、イギリスで開始されています。

この試験(NCT01843075)は、206名のアルツハイマー病患者にリラグルチドを投与し、12ヵ月後の脳の糖代謝率を評価するというもの。主なアウトカム指標として、リラグルチドで治療した患者の脳におけるアミロイドプラーク形成およびタウ沈着などのアルツハイマー病進行の特徴を、プラセボで治療した患者と比較して評価します。

Evaluating Liraglutide in Alzheimer's Disease  - ClinicalTrials.gov

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そーせい(Heptares)とGLP-1

インスリンと糖尿病とアルツハイマー病についていろいろ調べていると、そーせいホルダーとして、1つ気になることが出てきました。 それは、下記IRについて。

子会社 Heptares 社、ペプチド作動薬に結合した GLP-1 受容体全長の構造を初めて解明 - 受容体の複雑な相互作用の特徴を解明し、ペプチド及び低分子医薬品開発の重要な糸口となる研究を Nature 誌に発表(2017年5月31日)

そーせい(Heptares)はWave2のパイプラインに、先天性高インスリン血症のような希少疾患治療薬として開発を進めている「GLP-1受容体拮抗薬」があります。しかし、上記IRは"拮抗薬"だけに限らない、さらなる広がりの可能性を感じさせる内容でした。気になる点を抜粋すると以下の通り。 

本研究の重要な点は、この先駆的な研究が多くの疾患に関連するGLP-1受容体やその関連Gタンパク質共役受容体(GPCR)を標的として、構造ベース創薬の手法でより最適化された低分子医薬品、ペプチド医薬品を創薬することが可能であることを証明していることです。

2型糖尿病の治療において、GLP-1受容体の活性化は高い有用性が確立された最も重要な作用機序のひとつであり、さらに代謝性疾患、心血管疾患、脳疾患などの治療ターゲットとしての可能性にも関心が集まってきています。2型糖尿病治療薬として、承認されているペプチド作動薬は既に数種あり、エキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、albiglutide、dulaglutideなど、生体内の GLP-1 よりも安定性と作用持続時間が改善されています。

これは完全に僕個人の妄想でしかないですが、アルツハイマー病治療薬の開発として、アラガンとの契約に基づいてM1などMシリーズを進めていますが、それとは作用機序が異なるものとして、アルツハイマー病治療薬としての「GLP-1受容体作動薬」の開発にも乗り出すのではないか、と考えるに至った次第。

ただ、そうなったとしても、既存のインクレチン関連薬は存在しているし、仮に上市できたとしてもかなり先のことなので、短期的には影響は軽微でしょう。しかしそれでも、この難病に対する根本的アプローチへの着手は、個人的には大いに期待したいところであります。

 

※薬学、医学の専門家ではないため、間違った知識、解釈等があるかもしれませんので、見つけた際はご指摘ください…