ばりすたの株式備忘録

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日本で研究が進んでいるレビー小体型認知症の治療アプローチの最前線

今日(2018年7月19日)、エーザイからアルツハイマー病/認知症領域の開発品に関するリリースがありました。 

多くの人が注目するのは、7月6日に認知症新薬の臨床試験で有効性を確認したと発表された「BAN2401」でしょう。

www.nikkei.com

 

しかし、他の開発品に関する最新データも発表されるようで、個人的にはレビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies / DLB)の治療薬として開発されている「E2027」が気になりました。

今回は、レビー小体型認知症について整理しながら、関連する治療薬についてもまとめてみたいと思います。

 

レビー小体型認知症とは

DLBは、一次性認知症ではアルツハイマー認知症(Alzheimer's Disease / AD)に次いで多く、認知症全体の約2割を占めるほどで、脳血管性認知症とともに「3大認知症」と言われています。また、ADは女性に多く見られる傾向がありますが、DLBは男性に多いとも言われています。

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レビー小体型認知症の主な症状

臨床症状の中心的特徴は進行性の認知機能障害で、中核的な特徴としては以下のものが挙げられます。

  • 認知機能の変動
    その時々によって理解や感情の変化が起こり、日によって症状が良かったり悪かったりすることが特徴。

  • 幻視
    「座敷で3人の子どもたちが走り回っている(座敷わらし)」といった、非常にリアルな幻視を見るとも言われています。幻視は、極めてリアリティのある等身大の人物群が登場することが多いらしい。

  • パーキンソン症状
    歩きにくい、動きが遅い、手が不器用になる、あるいは、手足が震える、小刻みに歩くなどのようなパーキンソン症状が見られることも。

  • レム睡眠行動障害
    眠っている間に怒鳴ったり、奇声をあげたりする異常言動などの症状も目立ちます。

【図】レビー小体型認知症(DLB)の臨床症状(2017年改訂版)

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出典:エーザイ「アリセプト」サイト"診断基準" (PDFはこちら)

 

レビー小体型認知症の治療アプローチ

DLBは小阪憲司先生(横浜市立大学名誉教授)が提唱したこともあり、日本はDLBの鑑別診断において世界をリードしていると言え、中核的症状やバイオマーカーについても整理されています。

【図】レビー小体型認知症(DLB)の臨床診断基準(2017年改訂版)

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【図】レビー小体型認知症(DLB)のバイオマーカー(2017年改訂版)

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出典:エーザイ「アリセプト」サイト"診断基準"(PDFはこちら)


このDLBというものは、脳の神経細胞(主として大脳皮質)に「レビー小体」という円形のたんぱく質の塊ができ、それが神経細胞を傷つけて壊してしまって起こるものです。

DLB患者の脳萎縮はAD患者のものとは異なりコリン作動系により集中していて、ADよりもコリン作動系の損傷がはるかに大きく(下図参照)、同じ「認知症」でも、DLBとADとでは別の治療アプローチが求められています

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エーザイのアプローチ(アリセプトとE2027) 

現状、DLBを完全に治したり、進行を止めたりする薬はなく、日本ではドネペジル(アリセプト)が標準治療薬となっています(2014年9月にDLBの標準治療薬としての承認を取得)。 

www.eisai.co.jp

 

ドネペジル(アリセプト)は、脳の情報伝達物質「アセチルコリン(Ach)」を減らす酵素アセチルコリンエステラーゼ(AChE)」の働きを弱める作用があり、Ach濃度を高めて認知機能を改善することで症状が進むのを遅らせるもの。ただし、症状の進行に伴うAchレベルの低下/減少傾向にある患者には、そのベネフィットは限定的(副作用も存在する)とされています。

参照:アリセプト製品情報(PDF)

 

エーザイとしても、アリセプトがあるとはいえ、副作用があったり、効果が限定的だということもあり、2016年ごろから新薬の臨床試験に着手していました。それが「E2027」です。当時の記事には「レビー小体型認知症」という文字は見当たりませんが…

www.nikkei.com

 

このE2027は、エーザイのリリースによると以下のように記載されていました。

自社創製の選択的なホスホジエステラーゼ(PDE)9阻害剤です。PDE9阻害作用により、細胞内のシグナル伝達に重要なサイクリックGMP(環状グアノシン一リン酸:cGMP)の分解を抑制し、cGMPの脳内濃度維持することにより、レビー小体型認知症に対する新たな治療薬になることを期待

(DLBではなく)AD患者の多くは、サイクリックGMP(cGMP)がホスホジエステラーゼ9(PDE9)によって分解され、健常者と比べて20%前後少ないとされているようで、この部分にアプローチするようですね。ただし、いろいろ調べたところ、あくまでも「AD患者の多く」であり、DLB患者について選択的に効果が期待できるのかはよく分かりませんでした。 

ちなみに、E2027に関して、エーザイがリリースしている最新の情報は、2018年2月2日に開催された3Q決算説明会の資料でした。

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出典:エーザイ 2017年度(平成30年3月期)第3四半期 決算説明会資料(PDF)

 

また、E2027の臨床試験の最新情報は以下の通りです。

rctportal.niph.go.jp

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そーせいのアプローチ(HTL1831)

一方、そーせいもDLB治療薬を開発中です。

www.nikkei.com

 

そーせいのアプローチはエーザイのE2027とは明確に異なり、アセチルコリンと似た働きを持ち、アセチルコリンを代用することで情報伝達を正常な形に近づける、といったもので、ADとは異なりDLBに特徴的に現れる症状へのピンポイントでのアプローチですね。

既存のアリセプトとアプローチは似ているものの、そーせいが開発中の候補化合物は、アセチルコリンエステラーゼの働きを弱めてアセチルコリン濃度を高めるわけではなく、アセチルコリンそのものの役割を代用してしまう、というもの。

上記記事に認知症薬にはアセチルコリンを増やす効能のものがあるが、記憶以外の受容体に作用してしまう可能性があった」というコメントがあるように、これまでのものは選択性に課題があるので、そのリスクをなくしてしまおう、というアプローチですね。

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エーザイのAAIC2018(2018年7月22日〜26日)における最新データの発表も気になりますが、HTL1831の動向からも目が離せません!


参照:レビー小体型認知症を適用としたHTL001831の開発(日本)- 2018年個人投資家説明会 -

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なお、アルツハイマー病についてまとめた記事もあるので、興味のある方は以下の記事もご覧ください。

barista-stock.hatenablog.com

barista-stock.hatenablog.com