ばりすたの株式備忘録

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進行肝細胞がんに対する治療薬の現状について調べてみた。

これまで、がん治療薬について広い観点でまとめたことはありましたが、そこからさらに一歩踏見込んで、部位別のがんについて触れてみたいと思います。

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国立がん研究センターが公表している、がん患者の部位別10年生存率を見てみると、治療効果の高い抗がん剤の開発、放射線治療や早期発見の技術の進歩などによって改善は見られるものの、以下の部位のように、まだまだ生存率が非常に低いものも存在しているのが現状です。

  • 膵臓:5.0%
  • 肝臓:14.6%
  • 胆のう・胆道:15.2%

yomidr.yomiuri.co.jp

 

今回は、その中でも2番目に生存率が低いとされている肝臓がん(一般的には「肝臓がん/肝がん」というと「肝細胞がん」のことを指す)に焦点を当てて調べてみたのでご覧ください。

 

肝細胞がんの分子標的薬

肝細胞がんの治療は、下図のようにがんの状態によって様々で、分子標的薬による薬物療法はそのうちの1つの選択肢にしかすぎません。

※出典:「肝細胞がん 治療」国立がん研究センター

f:id:barista_stock:20180824001638p:plain

そもそも肝細胞がんは、再発や転移を何度も繰り返し、最終的に、切除や肝移植、肝動脈化学塞栓療法などの適応とならない進行肝細胞がんに進展することが多いとされています。こうした切除不能な進行肝細胞がんに対する一次治療薬として、分子標的薬である「ソラフェニブ(ネクサバール)」の有効性が2008年に報告されたのが最初でした。

そして2018年3月、エーザイ社と米メルク社から、「レンバチニブ(レンビマ)」について、日本において新たに「切除不能な肝細胞がん」の効能・効果追加の承認を取得したとの発表がありました。切除不能な進行肝細胞がんに対する一次治療薬としては、実に10年ぶりの新薬登場です。

www.nikkei.com

 

続いて2018年8月には、アメリカでも一次治療薬として承認を得たと発表されました。

www.nikkei.com

 

現在、2つの一次治療薬が存在しているとはいえ、「ネクサバール」も「レンビマ」も血管新生を阻害する分子標的薬であり、高血圧や浮腫、出血、手足の粘膜障害などの副作用が比較的高頻度で起きると注意喚起されているのが現状。

この「ネクサバール」と「レンビマ」との比較については、下記サイトに詳しいですが、以下の抜粋部分に注目してみましょう。

www.carenet.com

頻度が高かった有害事象(全グレード)は、レンバチニブ群では高血圧201例(42%)、下痢184例(39%)、食欲低下162例(34%)、体重減少147例(31%)、ソラフェニブ群では手足症候群249例(52%)、下痢220例(46%)、高血圧144例(30%)、食欲低下127例(27%)であった。

なお、有害事象とは、必ずしも副作用と同義ではなく、当該治験薬との因果関係の有無は問わないものであるため、一次治療薬として承認されているものでも、ある一定程度の有害事象は観察されていることが分かります。
※「有害事象」については誤解しやすいため、日本製薬工業協会の資料(pdf)をご覧ください 

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追記(2018/08/25)

フォロワーさんから「レンビマ」の有害事象についてコメントをもらいました。下記サイトのデータや記述を見ると、「レンビマ」の第2相においても、46人の患者のうち、

  • 34人(74%)で、治療関連の有害事象のため投与量調整

  • 10人(22%)で、毒性のため中止

という結果が出ていたようです。有害事象といっても、対象疾病や、被験者の疾病の進行具合、あるいは体調によって数値も大きく変わるだろうし、許容度合いも異なると思われるので、理解、及び解釈には注意が必要ですね。

dose adjustment in 34 of 46 patients (74%) because of treatment-related adverse events and withdrawal in 10 patients (22%) because of toxicity.

Lenvatinib in Advanced Hepatocellular Carcinoma - FullText - Liver Cancer 2017, Vol. 6, No. 4 - Karger Publishers

 

次の座を狙う開発中の新薬候補

MTL-CEBPA

それを踏まえたうえで、2018年6月にそーせい社が発表した、進行肝細胞がん患者を対象とした「MTL-CEBPA」の初期結果を見てみましょう。

治験担当医師が報告した有害事象の大半が軽度から中程度の重症度で、12 名(43%)がグレード 2 以下でした。

グレード 3 以上の有害事象には高ビリルビン血症(11%)、GGT増加(11%)、低リン酸血症(11%)、貧血(7%)、高血圧(7%)が含まれます。治験薬との因果関係が疑われる有害事象により投薬を中断したのは 3 名(11%)のみで、急性冠動脈症候群、高ビリルビン血症および GGT 増加などによるものです。

母数が少なかったり、まだ中間結果であったりはするものの、すでに一次治療薬として承認されている「ネクサバール」や「レンビマ」の結果と比べても優位性があると言えるのではないでしょうか。
※立場上、多少の色眼鏡で見てしまっている点もあるかもしれませんが、その点はご了承ください

ちなみに、「MTL-CEBPA」はsaRNAというメカニズムをベースとする核酸医薬に分類され、進行肝細胞がんを含む多くの形態の肝臓疾患において発現が抑制されることが知られている肝機能の主要制御因子である"CEPBA"に対してその発現を転写活性(アップレギュレート)して、肝機能を改善し、発がんを阻害するものと期待されています。

barista-stock.hatenablog.com

www.nature.com

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 ※出典:Sosei Group Corporation UBS Global Healthcare Conference(21 May 2018) 

 

なお、この第1相は9月には終了予定で、ひとまずは良い結果で終了しているような記載も見られたので、データ解析後の正式な発表が待ち遠しいですね。

clinicaltrials.gov

 

その他

既存の治療薬に近いものになりますが、現在日本国内で臨床試験が進められている主なものは、以下の2つでしょうか。

こちらの動向も気に留めつつ、「MTL-CEBPA」についての続報を待ちたいと思います。

 

ベバシズマブ(分子標的薬) + アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)

rctportal.niph.go.jp

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(予定試験期間:2018年3月~2022年6月)

 

デュルバルマブ(抗PD-L1抗体) + トレメリムマブ(抗CTLA-4抗体)

rctportal.niph.go.jp

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以上、進行肝細胞がんに対する治療薬の現状について調べてみた件でした。

そーせいホルダーの視点で書かれたものなので意見に偏りもあるかもしれませんが、その点はご了承ください。また、素人の知識で調べ、理解した内容であるため、間違っていたり、説明不十分だったりする箇所もあるかもしれませんが、その際はご指摘いただけると嬉しいです。 

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